ご先祖様がわが家に帰ってくるお盆。あたたかいおもてなしの準備をしてお迎えしたいですよね。
ですが最近は「仕事などで忙しい」「しきたりに馴染みがない」などの理由から、お盆のお供えをするご家庭が少なくなってきています。
形式通りきっちりすることは難しくても、ご先祖様を思う気持ちを形にしましょう。
今回は、お膳の献立やお盆棚の準備など「忙しくても、心を込めてできるお盆のお供え」についてお伝えしていきます。
宗派や地域によって異なる点もあるため、一般的な内容としてお読みください。
もくじ
お盆にお供えをする期間
8月13日の夜から16日までの4日間です。
13日の夜にご先祖様をお迎えし、16日の夜にお送りします。
地域によっては旧暦や1ヶ月遅れで行うところもあります。
お盆にする仏壇へのお供え、5つのポイント
1.仏壇のお供えの基本は「五供(ごくう)」
仏壇へのお供え物といえば、何が思い浮かびますか?お菓子や果物でしょうか?
ご先祖様が喜んで下さりそうですよね。
ですが、お線香やロウソクなども大切なお供えです。
■ 五供(ごくう)とは
仏教のお供えは「五供(ごくう)」と呼ばれる五つのお供え物が基本です。
五供とは、「香(お線香)」 「花」 「灯明(ロウソク)」 「水」 「飲食(お食事)」をさします。
それぞれの意味と準備するものについて、順番にご説明していきますね。
香(こう)=お線香
お供えした人の心と身体を清めるために用意します。
お線香のあげ方や、焼香の仕方は宗派によって異なります。そのまま立てたり、折って寝かせたり、本数がちがったりと様々なので、こちらでご確認ください。
花=季節の花
新鮮できれいなお花をお供えしましょう。お花のお供えは「花のように、清い心でいましょう」という仏様の教えが由来しています。
花屋さんで購入するほか、自宅の庭に咲いている花や野に咲く花でもかまいません。
ただし、あまり派手な色合いの花や棘のある花は避けるようにしましょう。
季節のお花だとキキョウやユリなどが清楚で美しいですね。故人が好きだった花も喜ばれることでしょう。
↓コンパクトなプリザーブドフラワーも便利です。
灯明=ロウソクやお線香の火
仏壇を照らすために、ロウソクの火を灯しましょう。これは、拝む人の心の闇や煩悩を取り除くためだと言われています。
注意したいのは、火を消すときです。ふーっと息を吹きかけてはいけません。
人の息にはけがれが溜まりやすいと言われているため、軽く振るか、手で仰いで消すようにしましょう。
↓毎日の礼拝に使いやすい、短時間使いきりタイプのろうそく。
水=新鮮なお水やお茶
お水やお茶をお供えすることを、仏教では「浄水」といいます。お水は水道水でもかまいませんが、こまめに入れ替えるようにしましょう。
水のお供えは「仏様のように清らかな心でいられるように」という意味があります。
※浄土真宗では「水」はお供えしません。
飲食(おんじき)=お膳、お食事
仏壇に供えるご飯のことです。肉・魚を避けた精進料理がのぞましいとされています。
1日3回。自分たちが食事をする前にお供えしましょう。
2.お盆のお膳は無理せず、心を込めて。
お供えの中で準備が大変そう・・・と思うのがお膳ですよね。お盆の期間の4日間、1日3回お供えします。
精進料理を盆膳、霊具膳など呼ばれる小さな食器のセットに盛り付けます。
精進料理と聞くと、料亭の高級なお料理というイメージしてしまいますが・・・肉や魚、匂いの強いものを避けてつくればOKです。
煮物やお漬物などの家庭料理を中心に並べましょう。
故人の笑顔を思い浮かべながら、好きだった物をお供えするのもいいですね。
お盆のお膳の献立例
正式なお膳の献立は、一汁五菜、二汁五菜というラインナップ。ですが、一汁三菜でも十分ごちそうだと思います。
献立例を記載しますので、参考になさってください。
飯椀:白ご飯
汁椀:おみそ汁やお吸い物(例:絹豆腐のすまし汁)
平椀:煮物(例:がんもどきといんげんの煮物、高野豆腐と野菜の煮物)
高杯:漬物(例:キュウリの浅漬)
つぼ椀:煮物・和え物(例:大根とにんじんの胡麻和え、昆布の佃煮、煮豆、ごま豆腐)
器の並べ方はあまりこだわる必要はありませんが、お膳の向きは仏壇側が手前になるように置きましょう。
つまり、お箸が仏壇側にくるようにということです。
・お盆のお膳の供え方
お膳を用意したいけど、時間がない!
4日間、毎食しきたり通りの献立を準備するのはとても大変です。
かと言って何もないというのも、さみしいもの。
気構えて億劫になってしまうよりは、手軽に、でも心はしっかり込めてお供えする方が喜ばれることでしょう。
無理せずお膳を準備する4つのポイント
・煮物や漬物は、時間があるときにつくり置きをする。
・スーパーのお惣菜やフリーズドライのお膳セットなど、市販品をうまく活用する。
・自分たちが食べている献立と同じものをお供えする。
・炊き立てのご飯だけでも用意する。
伯母が教えてくれたのが、フリーズドライのお膳セットです。
はじめて見た時は、こんな便利なものがあるのか~!と驚きました。
自分たちが食べている献立と同じものをお供えしているご家庭もあるようです。
また、おかずを用意するのが難しい場合は、炊き立てのあたたかいご飯だけでも盛り付けるようにしてはいかがでしょうか?
メリハリをつけて、どこか1日は真心を込めた仏様のためのお膳を用意し、それ以外の日は自分たちの食事と同じものをお供えするというやり方でもいいでしょう。
お膳はいつお供えして、いつ下げるのか
1日3回、自分たちが食事をする前にお供えしましょう。
生きている人が先に食べてしまうと「生き仏が先に食べる」と言われ、失礼にあたります。
下げるタイミングについては、悩まれる方も多いと思いますが、長時間お供えしておく必要はありません。
せっかくのお膳がいたんでしまう前に下げましょう。湯気がたたなくなったら、下げても構いません。
「お膳を下げさせていただきます。」ときちんとご挨拶してから下げ、そのお膳は仏様からの「お下がり」としてありがたくいただきましょう。
お膳の処分方法は?
うっかり長時間そのままにして、いたんでしまった場合は処分するよりほかありません。
そのまま、ゴミ箱に!ではなく、半紙などの白い紙に包んでゴミとして処分するようにしましょう。
3.意外と知らない、いただいたお供えの扱い方
いただいたお供えは包みをとき、すぐに食べられるように。
仏様が召し上がれるように、包みをといてお供えしましょう。果物は皮をむき、食べやすい大きさに切ってお供えします。
お供えの置き方
お客様からいただいたお供え。迷ってしまうのがその置き方です。
仏様にお供えするのだから、仏様に正面を向けて置くべき?と思いますが、実はそうではありません。
自分の正面に向くように置くのが正しい置き方です。
なぜなら、仏様は置く向きを変えることができないからです。
どういうことかと言うと・・・??
仏様に正面を向けてお供えすると、仏様が慈悲を感じ、供えた人の方へ向けようとして下さるのだそうです。
ですが、仏様は向きを変えることができないため、はじめから自分に正面を向けてお供えする方がよいとされているのです。
気が利いてる!ってやつですね。
私の家には仏壇がないので・・・「そう言えば祖母宅のお供えはどうだったかな」と思い浮かべてみると、確かにお花もいただいたお供えも、ぜんぶこちらを正面に置かれていました。
お供えのお下がり
供えの語源は「共に供すること」と言われています。
ご先祖様と同じものをわけ合って食べることで、大切に思っている気持ちを伝えることができ、供養にもなります。
お供えしたものをお参りした人に配ってもかまいません。
「お供えしていたものを渡すなんて、なんだか先方に失礼かな?」と思いますが、一度仏様のものとなったお供えをいただけるのは、むしろありがたいことだとされています。
お供えのお返し
お供えのお返しとして、お礼状を添えて返礼品を送りましょう。いただいたお品の3割~半額程度の金額を目安にします。
事前に用意しておいて、お参りした帰りに渡しても構いません。
ですが、親戚間の場合はお互い様ということでお返しの風習がない場合もあります。取り決めを確認しておくようにしましょう。
4.お盆の仏壇の飾り方
お膳やお供え以外に、必要なことはなんでしょうか?お盆といえば、ナスやキュウリで作った動物を思い浮かべますよね。
そのほかにもお盆ならではの準備があります。
盆棚(精霊棚、魂棚)
お盆のときに特別に用意する棚のことを言います。
ご先祖様をお迎えし、おもてなしするためのもの。供物を並べて飾り付けをしましょう。
本格的な盆棚は、祭壇の四隅に青竹をたて、上部をしめ縄で結んだもの。
ですが、スペース的にもちょっと厳しいですよね・・・。
仏壇の前に机を置くことで盆棚にできるので、今回はそちらの方法をお伝えします。
盆棚に並べるもの
位牌、香炉、燭台、花立、りん(これらは仏壇から移して置く)
お供え(五供)、精霊馬(キュウリの馬とナスの牛)
盆棚の飾り方
①仏壇の前に小さな机を置き、真菰(まこも)で作ったゴザを敷く。
②位牌を仏壇から取り出して、机の一番奥に置く。
③手前にりん、香炉、燭台を置く。花を飾る。
④キュウリの馬とナスの牛を飾る。小さめのサイズのキュウリとナスを使いましょう。
(この動物に乗ってご先祖様がやってくるので13日には内側に向けます。16日にはお帰りになるので外側に向けます。)
⑥「五供(ごくう)」、果物や菓子などのお供えをする。
※机の設置が難しい場合は、お仏壇の中に飾りやお供えをしてもかまいません。
・精霊馬の作り方
・盆棚(精霊棚)の飾り方
まとめ
幼い頃の記憶。祖母の家にあそびに行くと「まんまんちゃんに、どうぞしてきて」と食事を渡され、運んでいました。
(うちではなぜか、先祖の仏壇は「まんまんちゃん」・・・。幼い私にとっては親しみのある優しい響きでした。)
りんを鳴らして「まんまんちゃん、どうぞご飯をたべてください。」と手を合わせ、よく遊んでくれた曾祖母のことを思い出していました。
ご先祖様を思う大切な時間だったなと思います。
お盆は、ご先祖様が年に一度わが家に帰ってくる機会。
すべてをきちんとやろうと気負わずに、できる範囲で真心を込めて準備しましょう。