新元号【令和】の由来は、万葉集にある『梅の花の歌32首序文』です。
この和歌には、厳しい冬の寒さに耐え、見事に咲き誇る梅の花の姿が見事に表現されています。
貴族たちがつどう、うららかな”春の宴”でよまれたものです。
ちなみにこの”春の宴”は、万葉集編者・大伴家持(おおとものやかもち)の父、大伴旅人(おおとものたびと)の自宅で催されたものでした。
もくじ
万葉集『梅花の歌32首序文』を簡単に解説!
万葉集の『梅花の歌32首序文』は、大伴旅人(おおとものたびと)が開いた梅花の宴の様子をつづったものです。
ちなみに、この春の宴は天平2年(730年)の正月に開催されました。
今からおよそ1300年も前のことですね。
梅花の宴では、当時はまだ日本ではめずらしかった梅の花を題材に皆で和歌をよみあったのです。
大宰府長官だった大伴旅人(おおとものたびと)の邸宅は、現在の九州大宰府『坂本八幡宮付近』にあったとされており、【新年号 令和】ゆかりの地として、現在注目をあつめていますね。
(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/万葉集#/media/File:Genryaku_)
【令和】は、『梅花の歌序文』の中の次の一文を典拠にしています。
初春の令月にして、気淑く風和ぐ。梅は鏡前の粉を披く、蘭は珮後の香を薫す。
(出典:万葉集)
その意味は、後ほどくわしく説明するのですが、まずはざっくりとした内容をお伝えします。↓
【解釈】
初春の月はきれいだ。
空気も澄んでいて、やわらかな風が吹いている。
梅は、美女が鏡の前で塗る白粉(おしろい)のように、白く咲いている。
蘭は貴婦人の香のような香りをただよわせている。
まあ、なんとも優美なうたですね。
月が出ているということは夜の光景ということでしょうか?
それとも、昼間にうっすらと見える月のことなのかな?
どちらなのかはわかりかねますが、
昼なのか、夜なのか、それによって思い浮かぶ情景もガラッとかわりますね。
またこの歌では、
月→空気→風→梅→蘭
春の心地の良い情景が次々と描写されていますね。
そして、読み手の五感にうったえて表現しているところも特徴的です。
月・梅は視覚
空気・風は触覚
蘭は嗅覚
といった具合ですね。
万葉集『梅花の歌32首序文』、原文と現代語訳
万葉集『梅花の歌32首序文』原文
原文だけ読んでも、意味を理解することはなかなか難しく思いますが、あとに現代語訳をのせているので、まずはこちらからどうぞ。
天平二年の正月の十三日に、師老の宅に萃まりて、宴会を申ぶ。
時に、初春の令月にして、気淑く風和ぐ。梅は鏡前の粉を披く、蘭は珮後の香を薫す。しかのみにあらず、曙の嶺に雲移り、松は羅を掛けて蓋を傾く、夕の岫に霧結び、鳥はうすものに封ぢらえて林に迷ふ。庭には舞ふ新蝶あり、空には帰る故雁あり。
ここに、天を蓋にし地を坐にし、膝を促け觴を飛ばす。言を一室の裏に忘れ、衿を煙霞の外に開く。淡然自ら放し、快然自ら足る。もし翰苑にあらずは、何をもちてか情を述べむ。詩に落梅の篇を紀す、古今それ何ぞ異ならむ。よろしく園梅を賦して、いささかに短詠を成すべし。
(出典「新版 万葉集 一 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) 」)
万葉集『梅花の歌32首序文』現代語訳
天平2年の正月の13日、師老(大伴旅人・おおとものたびと)の邸宅(太宰府)に集まって宴会を行った。
折しも、初春の佳き月で、空気は清く澄みわたり、風はやわらかくそよいでいる。梅は佳人の鏡前の白粉のように咲いているし、蘭は貴人の飾り袋の香にように匂っている。そればかりか、明け方の山の峰には雲が行き来して、松は雲の薄絹をまとって蓋をさしかけたようであり、夕方の山洞には霧が湧き起こり、鳥は霧の帳に閉じこめられながら林に飛び交っている。庭には春に生まれた蝶がひらひら舞い、空には秋に来た雁が帰って行く。
そこで一同、天を屋根とし、地を座席とし、膝を近づけて盃をめぐらせる。一座の者みな恍惚として言を忘れ、雲霞の彼方に向かって、胸襟を開く。心は淡々としてただ自在、思いは快然としてただ満ち足りている。
ああ文筆によるのでなければ、どうしてこの心を述べ尽くすことができよう。漢詩にも落梅の作がある。昔も今も何の違いがあろうぞ。さあ、この園梅を題として、しばし倭の歌を詠むがよい。
(出典:「新版 万葉集 一 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) 」)
新版 万葉集 一 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) [ 伊藤 博 ]
現代語訳を読むと、情景が豊かにイメージできますね。
個人的には、
『春に生まれた蝶がひらひらと舞い、秋にきた雁(がん)が帰っていく』
『天は屋根、地は座席、膝を近づけて盃(さかずき)をかわす』
という表現が、好きだな~~。
【令和】万葉集現代語訳を学ぶ!おすすめの本
新年号の発表を機に、万葉集をはじめとする『日本古典』に興味をもった方も多いのではないでしょうか。
万葉集の現代語訳について詳しく知りたい方には、こちらの本がおすすめです。
【令和】の発表以来、とぶように売れているそうですね。
売り切れになっちゃうかも??
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万葉集の『梅花の歌』は作者不明?
【令和】の由来となった万葉集の『梅花の歌』ですが、作者は誰でしょう?
おそらく、万葉集の序文なので、編者である誰かがよんだものなのではないでしょうか。
また宴の開催場所が、大伴家持(おおとものやかもち)の父、大伴旅人(おおとものたびと)の自宅であったことからも、この歌をよんだのは大伴家持(おおとものやかもち)ではないかと推測されます。
【令和】梅花とSMAPの『世界に一つだけの花』との関連
安倍首相は記者会見で、「厳しい寒さのあとに咲き誇る花のように、日本人一人ひとりが明日への希望を咲かせられる国でありたい。」と語っていました。
なんとここで!SMAP名曲『世界に一つだけの花』を例にあげていましたよ!
国民的な名曲ですものね。
安倍総理大臣の「一人ひとりの花を咲かせよう!」というメッセージがしっくりくるのは、この歌の歌詞の影響が大きいのでしょう。
また、若者にも親しみやすい元号であることを意識したことが、『世界に一つだけの花』を例にあげたことからもよく伝わってきますね。
まとめ
【令和】の典拠となった万葉集の梅花の歌は、優美でうららかな印象ですね。
その情景がありありと目に浮かび、うっとりしてしまいます。
また、万葉集の編者である大伴家持は、なかなかな苦労人でした。
政治的関係に緊張をしいられ、家長として家を守っていく重責にも耐えながら、才能を開花させた人物です。
興味のある方はこちらもどうぞ。
万葉集の作者(編者)は大伴家持!葛藤を不屈の精神で乗り越えた
思い悩んだとき、迷ったとき。
そういうときにこそ、自然の美しさに心が和み、生きる力をもらう。
大伴家持の生涯を知ると、梅花の歌にはそんなメッセージもこめられているような気がします。
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